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2015年02月24日

高幡・百草

コウノトリ野生復帰研究セミナー

亀津 照明

イベント種別:講演・講習会・交流対象者:指定なし

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コウノトリ 野生復帰研究セミナー
  - 放鳥の新たなステージに向けて –
    2015年2月21日(土)
                  東京都多摩動物公園  動物ホール

コウノトリ が日本各地の空に戻って来る、関東平野を飛ぶ!!! 
そんな夢の実現を目指すグループや施設の代表者、研究者、そして実践的に
取り組んでいる人達による公開セミナーが本年2月21日(土)多摩動物公園の
動物ホールで開催され、ざっと200名ほどの参加者でした。多摩動物公園は豊岡のコウノトリの郷と並んで、コウノトリの飼育と繁殖の拠点です。

ニホンコウノトリ(Oriental White Stork) はツルと同じような大きさの鳥で、一見ツルに似ていますが、違う種類です。ヨーロッパのコウノトリとも違う種です。嘴は大きく長い。ツルと違い、高い木の上で営巣する鳥です。古くは日本の各地で普通に見られたそうですが、1956年に特別天然記念物に指定された時は既に手遅れ、1971年に日本の空から消えてしまいました。その後、兵庫県豊岡でソ連から導入した個体、多摩動物公園で中国から導入した個体を飼育、繁殖の努力を続けた結果、10年前、2005年に豊岡市で5羽のコウノトリが放鳥されて以来、2015年現在何と72羽が豊岡の野外に生息しているそうです(勿論遠くまで飛んで行った個体もあると)
すべてのコウノトリは国際血統登録がされていてどこでも識別可能です。

コウノトリの郷公園園長の山岸哲氏が基調講演で、2005年の放鳥から今日に至る歴史的な経緯と現状、そして野生化を進めて行く上での問題点と新しい組織的、全国的な取り組みである、IPPM―OWS(コウノトリの個体群管理に関する施設間パネル) について話をされた。
続いて、IPPM-OWS事務局長の大橋直哉氏が詳しいデータでコウノトリの現状と問題点を洗い、長期的視野に立った繁殖計画とIPPM-OWSの果たす役割について話された。
コウノトリの現状と問題点
 野外の個体群(2015・1・21現在)             72羽
 飼育下(動物園等)の個体群(2015・2・21現在)19施設  194羽 

 野外個体数が増加、第2世代、第3世代のペアが増えて、血統管理が難しくなりつつある。
 飼育個体群が特定の施設に集中していること。194羽のうち、コウノトリの郷と多摩動物公園に75%が集中している。
 創始ペアの高齢化が進んでいること。
 遺伝的多様性を保つためには追加放鳥を行う必要がある。
 兵庫県以外の新しい放鳥団体、自治体との対応
 啓蒙普及活動など

ジャーナリストの松田聡氏は豊岡での野生復帰が上手くいったけれども、このままでは過密状態になり、リスクも高くなる。従って、生息地域を広げ、飼育施設を増やす必要性があると。そして韓国に飛んで行った個体の話とまた韓国でも飼育、繁殖と野生復帰の放鳥計画が進んでいることを話した。また将来的にはアジアの広域的分散化を図ることも必要だと。

福井県と千葉県野田市の方が、それぞれコウノトリの飼育、繁殖に取り組んできた背景と経緯を説明された。今年、文化庁の許可が出れば、試験放鳥の実施予定であること、福井県越前市は以前コウノトリが沢山いたこと、豊かなすいでんや自然環境があること。野田市もまた関東平野のただ中にあって自然環境豊かな土地であることをアピールされました。
この2件の新たな野生復帰の試みは、素晴らしいことですが、実施にはさまざまな問題がありそうです。特に、安全な生息環境という点で、無農薬、無化学肥料での水田や畑の確保、それと野田市の場合、関東自治体フォーラムでプロジェクトの共通認識ができるかどうか、等々。
自治体にとっては、一生懸命に飼育繁殖して放鳥したコウノトリが他所に飛んで行ったまま帰宅しなかったらどうしよう、という心配もあります。

文化庁の許可が下りれば、この2件のテスト放鳥が始まるそうですが、とても楽しみです。本当に関東の空をコウノトリが舞う日が来るか。
コウノトリにとって、新しい生息地が日本各地にひろがり、中国や韓国、ロシアまで飛んで行き、そこで新しい番が増えれば種の多様性が増え、また別の個体が日本の繁殖地へ飛来する、そうなれば、絶滅危惧種から脱却できるかも。そして我々人間にとっても自然豊かな素晴らしい生息環境も享受出来るかもしれません。
                         まち記者  亀津照明

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